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エンタープライズ・コミュニティジャーニー 〜Tech-on活動1周年を振り返る〜 vol.1「立ち上げ編」

2018年の4月以降、これまでの"勝手"AWS社内エヴァンジェリストという立場から社内の技術コミュニティ活動推進というロールに移り、現在まで約1年と3ヶ月活動してきました。次回Tech-on MeetUp#07で、Tech-on活動そのものも1周年を迎えます。このロールはこれまでの個人活動の延長線上にありながら、本業務のひとつに昇華させた面白い事例として私の中でも非常に貴重な経験となりました。

この経験は、もしかしたら私と同じように日本のエンタープライズに所属し、同じようにコミュニティ立ち上げに悩まれている境遇の人とって役に立つ情報になるのでは?と思い、記事として起こしてみることにしました。

コンパクトにまとめようと心がけたつもりだったのですが、それでも非常に長くなってしまったので、3部構成としました。

vol.1:立ち上げ編 ← いまココ!
vol.2:スケール編(準備中)
vol.3:成果&まとめ編(準備中)

今回はvol.1「立ち上げ編」になります

すべては一人の情熱から始まった

Tech-on活動のスタート時点のお話や立ち上げ前後の経緯はこのブログに記載しているのですが

techplay.jp

私がAWS社内エヴァンジェリストを勝手に標榜していた時代に学んだ"最強の学習体験"を、他の技術者たちにも味わってもらいたいという純粋な思いからこの活動はスタートしました。

所属本部の本部長に中期計画の中に取り入れてもらったり、所属本部内での運営メンバー公募に30人近い社員が名乗りを上げてくれたりと、たくさんの人の後押しや幸運が重なったこともありますが、何より「今こそアクションを起こすべきだ」と考えていた人間が沢山いた、ということが、私が踏み出した最初の一歩を大きく勢いづけるきっかけになったのは間違いありません。

↓記念すべきキックオフ f:id:mamoahcy:20190705091351j:plain

目指すは「全社展開」と「文化醸成」

Tech-on活動は私個人がはじめたものとはいえ、最初から全社展開と文化醸成を狙っていました。単純に私個人がやりたかったという強い思いがあったのは事実ですが、むしろこの文化が全社に広まらなければ、狭い視野、狭い世界の中で生きる「井の中の蛙」になってしまい、やがてIT業界において「茹でガエル」となり、孤立してしまうかもしれない、、、という危機感が、私の衝動を後押ししていました。

自社のもつブランド力/社会的影響力がいかほどのものかはAWS勝手エヴァ時代に十分に経験しています。弊社が変わっていく様を見せられれば、この業界に何らかの影響を与えられるかもしれない。であれば、まずは我々がその最初のきかっけ、つまり「会社の文化を変える起点になりたい」と考えました。

しかしこの目標を達成するには、「ただのモノ好きの集まりによる草の根活動」では絶対に不可能であることは明白です。

なので、表向きにはコミュニティ活動というライトでインフォーマルな活動であるという見せ方をしつつも、裏では最初からいくつもの"作戦"を用意し、用意周到に進めていきました。これらの作戦は他にも沢山あったのですが、ここではそれらのうち効果の大きかった4つを代表して取り上げてみます。

作戦1:外向きのTech-onと内向きのTech-in

1つめの作戦は、「表と裏の組み合わせ」です。

我々の技術コミュニティ活動には、対外的に活動を行うオープンな「Tech-on」と、社内に閉じたクローズドな「Tech-in」の2種類があります。この2つはまさに表裏一体であり相互補完する役割を担っています。

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Tech-onは、「社外との技術者とつながる場」としての機能をもちます。

業務の一部として活動していることは極力言わない、というより、そもそも自社の製品をPRする場所ではないですし、そもそも業務時間外で行うイベントなので、社名を伝える必要もありません。とはいえ、社としてのサポートが入っていることは事実で、そのために毎回、自社あるいは自社グループ企業のメンバーが登壇者として発表することを条件にしていました。

Tech-inは「社内のコミュニティ文化醸成を技術をテーマに牽引する」役割をもちます。

これは我々が技術部門だったからで、技術にこだわる必要はまったくないのですが、この「技術部門が技術力の切磋琢磨を行うためにこの活動をやっている」という建て付けは、大企業でなにかの活動を進めるためには非常に重要なファクターです。 大企業で確信的なことをやるためには、その革新性が理解できない人への「言い訳」が必要なのです。


 またTech-onとTech-inという名前やアイコンの意匠を近づけたことにも意味があります。

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これはどちらか一方にだけ参加した人が、同じような名前の色違いのアイコンを持つ活動が行われていることをどこかで目にしたときに「違和感」を覚えるだろうと考えたからです。

「自分の知っているものと似てるけど、どこかが違う・・・」

そんななんともいえない気持ち悪さのようなものを逆手に取った手法です。


この「表裏一体」作戦は一定ラインの成功を収めていて、いろんな方から「onとinて何が違うの?」といった問い合わせをたびたび受けたり、またTech-on/Tech-inがそれぞれの活動を説明する際にお互いを引き合いに出して自らのコンテキストを明示するなど、様々な良い効果を生み出しました。

作戦2:社外コンサルの採用

2つ目の作戦は、「コミュニティ・コンサルタントの採用」です

私自身、コミュニティの参加経験や運営経験などはあるものの、これまでゼロからきっちり立ち上げた経験はありませんでした。ただ、いくつかのコミュニティのコアメンバーやコミュニティヒーローと呼ばれている方々と知り合えるチャンスを頂き、彼らから苦労話をいくつも聞いていたので、「何をやったら成功するか?」よりも「何をしたら失敗するか?」はだいたい把握できていました。

Tech-onスタートにあたり、それらの裏付けがほしかったことと、逆に「何をすれば成功するのか」という視点にたったアドバイスがほしかったので、今回は社外のコンサルを依頼することにしました。

依頼した先は、エヴァンジェリズム研究所の、長沢 智治さんです。

www.evangelism.jp

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もともと私がお知り合いであったこともあるのですが、マイクロソフトやアトラシアンなどで数多くのエヴァンジェリストを経験してきた彼の知見は「エンタープライズにおけるコミュニティの立ち上げ」という今回のテーマに間違いなくマッチすると考え、迷うことなく依頼したのですが、彼は快く引き受けてくださいました。

長沢さんには2週間に1度のペースで、我々が立案したイベントやコミュニティ戦略についてレビューして頂いたり、一緒に議論をしたりしてTech-on/Tech-in活動の成長の手助けをしていただきました。オンラインでもオフラインでも相談にのっていただき、これまでの経験であったり、エンタープライズ独特の課題であったりを注入して頂きました。

エンタープライズでコミュニティ活動を立ち上げるにあたって、長沢さんのようなコンサルに頼ることは色んな意味で効果的だと思います。もちろん予算の都合もあるとは思うのですが、「言い出しっぺの社員が言った与太話ではない」という事実は社内に対して強力な説得力を持ちます。

作戦3:コミュニティマーケティング・フレームワーク

3つ目の作戦は「マーケティングとしての目線を持つ」です。

コミュニティの立ち上げという単純な問題ではなく、「社内へのコミュニティ文化の醸成」という高い視座で考えた場合に、コミュニティ活動そのものをターゲットユーザーにプロモーションする必要があります。目的がコミュニティ文化の浸透だとすると、Tech-onやTech-inは1つの商品でありブランドであるといえるはずです。だとすれば、そこには間違いなくマーケティングの目線がいると考えました。

ここで私が浮かんだのが、元AWSの日本人1号社員でありJAWS-UGの生みの親である、小島 英揮さん が掲げていた「コミュニティ・マーケティング」でした。

↓リンクが正しく埋め込めないので日付ページをリンクします stilldayone.hatenablog.jp

彼が主宰するCMC MeetUp(コミュニティマネージャーが集まるコミュニティ:CMC_Meetup (Community Marketing Community)|EventRegist) でも度々言及されていたフレームワークのひとつである「3つのファースト」は、自走するコミュニティを作っていくための軸となる考え方であり、同時にコミュニティそのものはもちろん、コミュニティがもつコンテキストを適切な場所に打ち込んでいくために必須の考え方であると感じました。

上記から引用してみます。


オフラインファースト:オフライン=F2Fな場でネットワークやコンテンツを作るのが先。オンラインで拡散するのはそれからの話。(ただし、SNSによってオンラインの拡散力が10年前より飛躍的に高まっていることは要注目)
アウトプットファースト:参加者ができるだけコミュニティを「自分ゴト」としてとらえられるように、情報発信(アウトプット)側に回れるようにする。LTやtwitterでリアルタイムに参加したり、事後にブログにまとめるところからでOK。「ブログ書くまでが勉強会」は真理。
コンテキストファースト:コミュニティ参加者の「興味の粒度」があっていることが重要。これが多様化してきたら、コミュニティの「株分け」や、「テーマ縛り」での開催も検討する段階。


この「3つのファースト」を、Tech-on/Tech-in活動にも徹底的に当てはめて運営してきました。

①アウトプットファースト

はじめからハッシュタグを用意し、ツィートされた内容をまとめるTogetterも最初から用意していました。

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アウトプットされた内容が公式に取り上げられるという状態を作っておくことで、次の登壇者や参加者エンゲージメントが高まるのを、会を追うごとに感じていました。

②オフラインファースト

Tech-onもTech-inも、「オフラインでの技術勉強会が軸であること」 と 「ネットワーキングのための懇親会を必ずセットにすること」をルールとして運営してきました。

まずTech-onは奇数月、Tech-inは偶数月に2ヶ月おきに必ず開催し、知名度が高まるまでは続ける覚悟をしていました。これは、単発の勉強会をランダムに開いていたのではなかなか知名度が上がらず、エンゲージメントの高いリピーターを作ることができないと思ったからです。この作戦は、上層部に対して定期的に活動成果のインプットが行われるという副次効果も生み出し、参加者サイドではないエリアでのプロモーションにも一役買うことになりました。

また運営サイドの話ですが、イベントの内容を検討する「コンテンツ検討会」と呼ぶ打合せを、毎週1回同じ日程で開催することにしました。勝手知ったる旧知の仲で構成されたコミュニティならともかく、Tech-onは公募により集めたメンバーでスタートしたために、相手の素性がまったくわからない関係の人もいます。オフラインで会い、面識を深めていく機会を定期的に作ってあげることでメンバー間の絆を深め、より良いコンテンツづくりができる人間関係を作っていきました。

③コンテキストファースト

Tech-onとTech-inが何を目指して活動しているのか。そのコンテキストを明確にすることはとても重要です。

当初Tech-onもTech-inも、下記のスライドをよく用いて説明を行っていました。 コンテキストをFixし、イベントのオープニングで毎回説明するということも欠かさず行ってきました。

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我々のテーマは「技術者同士を、人と人とのネットワーキングで繋ぐ」という、すこし漠然としたものでした。考え方次第では「技術者の飲み会」とも囚われかねないテーマですが、ここはトレンド技術を広く扱うことや、あくまで技術勉強会であり製品宣伝やハイヤリング行為を厳禁とする旨を同様に伝え、コンテキストがぶれないように注意してきました。このように明文化することは参加者に向けての啓蒙はもちろん、運営メンバーの意識を高めることに繋がるので非常に重要だと感じました。

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私は小島さんの回し者ではないのですが(笑)、上記3つのファーストを含むコミュニティ・マーケティングの真髄をまとめた書籍があるので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング

ビジネスも人生もグロースさせる コミュニティマーケティング

作戦4:オンライン空間への徹底した「種まき」

最後の作戦は「地道な草の根活動を忘れない」です。

小島さんの提言にあるようにオフラインでの活動ももちろん重要ですが、せっかく始めたものを記録に残していかないのはもったいないですし、この先Tech-on/Tech-inの認知度が上がって、いつか我々をエゴサーチしてくれる人が登場したときに、どこにもコンテンツがない!とあっては新しいユーザーを取り込むこともできなければ常連参加者によるクチコミにも繋がりません。

なので、インターネットやイントラネットといったWebへのアウトプットは、絶対に手を抜きませんでした。

①Tech-onの場合

Tech-onではコミュニティ公式サイトをTECH PLAY(https://techplay.jp/)上に構築し、イベント募集/ブログ投稿/イベントレポートをすべてこの上に落とし込んで行きました。

techplay.jp

また公式Twitterを作成してイベントの最中はもちろん、前後にもツイートを実施。

twitter.com

イベント時には自らTogetterでまとめサイトも作り、皆さんがアウトプットされた内容をとりまとめたりもしました。

togetter.com

また公式からのアンケート結果の周知や、登壇者の方がスライド共有サイトのアカウントを持っていなかったときのために、予めSlideShareの公式アカウントも用意し、ここからの情報発信も行ったりもしています。

www.slideshare.net

ポイントは、これらすべてを会社の正規の手続きを踏んで正式に許可された状態で使っていたという点です。「ダマでやらない」という点も、Tech-onの活動趣旨の1にに設定していました。

これらのメディアを効果的に使い、あえてバズるようにイベントの前後で連投したり、レポートやブログなどはなるべく早い段階でアウトプットするようこころがけていました。

↓イベントレポートの例

techplay.jp

Tech-inの場合

一方、Tech-inでは、社内ポータルサイト内に公式サイトを設置し、イベント告知やスライドの共有もここから行うようにしました。Tech-inの場合は社内限定であるために社外に告知サイトやポータルサイトをおくわけにはいきません。社員であればだれでもアクセスできる場所にランディングページを置いたことでプロモーションの際も社内メールを使って問題なくURL案内できることや、トップページから少ないクリックでたどり着ける場所にあることでアクセス数の向上や初回参加者への説明が楽になるなど数々のメリットを生み出せました。

↓ポータルサイトイメージ(超マスクしてます・・) f:id:mamoahcy:20190705094548j:plain

また上記以外に社内NWからのみアクセスできる「Tech-onブログ」と称したブログを立ち上げ、イベントレポートを必ず毎回記載していくことを行いました。 ここにはTech-inだけではなくTech-onのイベントレポートも記載してポータルサイトからリンクし、より詳細でキレイな記事を書いて新規参加者や参加できなかった社員が現場の雰囲気を感じ取れるよう工夫してきました。

↓Tech-onブログ f:id:mamoahcy:20190705094610p:plain

↓Tech-on MeetUp #06のイベントレポートの抜粋 f:id:mamoahcy:20190705094557p:plain

こういったWebへのアウトプットはすぐに効果が期待できるものではなく、人の目に触れたり他の人がシェアすることで徐々にその効果を発揮していくものです。始めた頃は「誰も見ていないのになぜやるんですか?」といった疑問も運営メンバーから出たりもしましたが、「必ず芽が出るときが来るからそれまでの種まきだと思って頑張ってほしい」とPUSHし続けてもらいました。

立ち上げ編 まとめ

Vol.1もだいぶ長くなってしまいました。。。ここまで読んで頂きありがとうございます。

私1人の思いでスタートしたこの活動は、この活動に賛同してくれる熱意ある有志メンバーと、理解のある上長に背中をされて最初の一歩を大きく踏み出すことができました。目標は大きく設定し、そのために取りうるべき対策はすべて打って出港することができましたが、正直心の中は不安でいっぱいでした。

そんな私の不安を払拭してくれたのは、運営メンバーのみんなの精力的な活動や、裏側でいろいろ動いてくれていた上司の方々の後押しでした。いろんな意味で私は幸運だったと感じますし、同じ志を持つ仲間には感謝の気持ちしかありません。

vol.2では1回めの開催から中間地点までのあいだの活動と、コミュニティのスケールアウトに向けた戦略についてお話ししたいとと思います。