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エンタープライズ・コミュニティジャーニー 〜Tech-on活動1周年を振り返る〜 vol.2「スケール編」

3部作でお送りしている本エントリ。今回は2回めの「スケール編」になります。


vol.1:立ち上げ編(http://blog.mamohacy.com/entry/2019/07/05/114927
vol.2:スケール編 ← いまココ!
vol.3:成果&まとめ編(https://blog.mamohacy.com/entry/2019/07/08/085015

vol.1に書いた複数の作戦を引っさげて、Tech-onは奇数月、Tech-inは偶数月にそれぞれ定期的に勉強会の開催を重ねて行きました。

Tech-on MeetUp #01

記念すべき第1回の開催は、キックオフから約2ヶ月後の2018年7月9日で、イベント告知も行っているTech Playがファシリテーションとして保有いるTECH PLAY渋谷を会場として開催しました。

techplay.jp

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初回のテーマは「開発現場に効くサーバーレス」で、私個人のAWS界隈の繋がりから登壇をお願いするなど手探りで調整を行っていたことを思い出します。この時点では告知やプロモーションもかなり個人的な繋がりからのみ行っており、ある程度予想できる範囲での集客となりましたが、それでも86名の方に参加していただき、初回としては大成功を収めることができました。

集合写真はまだ取り慣れていないこともあり、ほとんどの参加者が帰ってしまった後に撮影するという大失態。しかも皆ポーズがバラバラです。いかにもな感じがとても初々しく感じます。

Tech-in MeetUp #01

Tech-inの初回は2018年8月20日に開催されました。

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Tech-in初回のテーマは「挑戦者〜渦に飛び込む者たち〜」で、その名の通り技術部門が自らの業務で行った「挑戦」を語ってもらう会でした。この時点ではまだ一般公募で集めたLTを組み込むようなスタイルではなく、本編と懇親会のみというシンプルなものでしたが、懇親会を有料(500円)としてスクリーニングしたことはある意味正解でした。コミュニティ活動に賛同あるいは理解のある質の高いメンバーを懇親会に集めることができ、いわゆる「ピザ・ビールの人」を排除することができました。この500円スクリーニングは現在のTech-inでも継続して行われています。

Tech-on MeetUp #02

techplay.jp

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Tech-on2回めのテーマは「マネージドサービスだけに頼らないコンテナ基盤」で、登壇者調整を社内のコンテナの第一人者に依頼し開催しました。登壇者として非常に幅広いメンバーを集めることに成功し、比較的PublicクラウドであるAWSに寄っていた前回とは対象的に、自前構築を前提としたコンテナのマネジメントにフォーカスを当てるという非常にTechyな内容となりました。 懇親会のファシリテーションが少しずつ板についてきて、集合写真でハンドサインをするというのもこのとき初めて実施しました。


この3ヶ月間で開催した勉強会は合計3回で、この間にイベントコンテンツを検討する打ち合わせは合計10回も開催しました。累計動員数は205名、登壇者は述べ12名で、順調に動員数を積み上げていきました。またここまでの間はTech-onもTech-inも運営メンバーのリソースを完全に共有していたため、メンバーのイベント運営経験値はこの3回でメキメキと上達することになりました。

そして、第二形態へ

1年3ヶ月でどれだけ開催することができたのかvol.3でお話するとして、キックオフから半年が過ぎようとしていた頃、我々はTech-on/Tech-inを次のステージに上げる覚悟を決め、スケールアウトに向けた3つの作戦を実行に移すことにしました。

作戦1:イベント運営業務の委譲

Tech-onとTech-in通算で4回めの開催を迎えようとしていた2018年10月。これまで私を加えた3名で構成される事務局で主導していたイベント企画や運営、登壇者調整といった業務のほとんどをコミュニティ本体側に移すことを考えました。もちろん事務局は健在で、イベントの企画/運営は一緒に並走するような形です。

しかしコミュニティに対して何も考えずに権限委譲するのはあまりにも乱暴です。本来なら立候補でリーダーを決めたいところですが、自尊心の強くない日本人はなかなか自分からリーダーになろうと言い出す人はいません。

"誰がリーダーなのか"を外から示してあげないと、日本人の組織はドライブしないのです。

この時点で、それぞれ誰がこのコミュニティを引っ張っているのか、また誰が引っ張っていける素質を持っているかは明らかでした。そこでまず、事務局内で「コミュニティリーダー」を決めてインフォーマルな形で直接本人に合意を取得。そのうえで、リーダーとも相談しながら「コアメンバー」を決め、合計3人でチームを引っ張る体制を定めました。もちろんチームへの発表は本人たちの合意形成をとってから行いました。

その上で、この3人のコアメンバーに対して、イベントの企画、運営、ならびに登壇者調整といった業務を委譲しました。すでに運営メンバーとして経験を重ねているメンバーですから、あとは自分なりの動きでこれをトレースすれば良いので、引き継ぎは比較的スムーズに行うことができました。もちろんコアメンバーでない運営メンバーもそれぞれTech-onかTech-inのどちらかの運営メンバーに引き続き参加することができます。

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リーダーとコアメンバーを定めることで、「誰が喋っているのか」「誰が支えているのか」を他のメンバーや外部に対して明確にできます。これは任された本人たちにとって大きなモチベーションUPに繋がり、運営する側も参加する側も、非常にシンプルに受け入れることができる構成だと思います。

ちなみにTech-onとTech-inのコミュニティリーダーは、以前の記事でもご紹介したとおり、前回のCLS高知に一緒に参加した「かず」と「hayase」です。彼らはキックオフの時から参加していましたが(写真にもばっちり写っています)、きっとあのときは自分がコミュニティリーダーになるだなんてきっと考えてもみなかったんじゃないでしょうか。今のお二人の情熱的な活動を見ていると、リーダーに選ぶことができて本当に良かったなと思います。

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作戦2:Tech-in支部の開始

実はコミュニティ運営業務を事務局からコアメンバーに移したのには理由があります。それは、事務局がコミュニティ文化醸成の加速の「仕込み」に注力できるようにするためです。

その1つが「コミュニティ文化を広めるための支部展開を行う」というものです。

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Tech-inというコミュニティ活動が少しずつメジャーになりつつあった社内において、Tech-inの名前そのものをブランドとして使えば、活動のプロモーションを楽にすすめることができるのではないかと考えました。少なくともTech-inは我々の所属本部としては公式の活動であり、その冠を使うことは間違いなく活動開始の敷居を下げることにつながるはずです。

またこれまでTech-inは社内のみを参加者の対象者としていましたが、Tech-in支部では参加者の範囲をグループ企業全体にまで拡大。より多くの出会いやつながりを生むと同時に、グループ企業間のシナジーを現場サイドから作り出すきっかけとなる"場"になることを目指しました。

この方針を定めて最初に立ち上がった支部が「Tech-in AWS」です。その名の通り、AWSに関する内容を深掘りしていくコミュニティです。JAWS-UG界隈でも有名になるほどAWSに関して並々ならぬ情熱を燃やす「たかみー」(https://twitter.com/t_t02)がコミュニティリーダーとなり、AWS re:Invent Recapからイベントをスタートさせています。このイベントでは集客数が90名を超え、さらにはAWSからもSAに登壇いただくなど、初回開催としては異例の大成功を収めることになりました。

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作戦3:コミュニティ文化を「みんなのもの」へ

コミュニティ運営をコアメンバーに預けたもうひとつの理由が、「関係者の拡大」です。

いずれこの活動を全社に展開していくのであれば、この先必ず「技術」の枠を超えなければならないはずです。であればあらかじめ少しずつ関連部門を増やし、このコミュニティ活動を我々の所属部門だけのものではなく、全社で取り組むものにしておくべきです。

これに対して、具体的には2つの取組みをしました。

ひとつは「本部外の組織とのコラボレーションの開始」、もうひとつは「技術エヴァンジェリスト制度の検討開始」です。

前者は、この活動に賛同・支援してくれるであろう他の部門にあたりをつけて協業をもちかけていくこと、後者はTech-onに登壇できるようなエヴァンジェリズムを持った技術者を精力的に増やしていけるようにする活動です。この2つはあまり詳しくお話することができないのですが、いずれの施策もこの活動を支えるステークホルダを所属本部から拡大し、この活動を運営メンバーと事務局だけのものにしないようにすることがその目的になります。

スケールアウトの対象を「コミュニティ自身」ではなく「コミュニティ文化」と捉えた場合、むしろこちらの戦略のほうがより重要なのかもしれません。しかしこの施策は少なくともひとつの成功事例がなければ取り組んでも説得力が薄く、また完全にコミュニティができあがってしまってからでは方針転換が難しくなり、進捗が遅れてしまう可能性があります。開始のタイミングとしてこれから爆発していくであろう直前を狙ったのは、ほぼ間違いなかっただろうと感じています。



こうして、第二形態へ進化したTech-on/Tech-inは、着実に、そして確実にコミュニティ活動の経験を積みながら成長し、コミュニティ活動の全社展開へ向けて少しずつスケールアウトを始めました。

スケール編 まとめ

ドキドキの初回開催から徐々に回数を重ね、経験値がついた頃に運営の主管をメンバーに移譲させました。

これはムーブメントを大きくするための施策の1つであったことは間違いないのですが、もう1つは、「mamohacyのコミュニティである」ということを早い段階で脱却したかったという思いもありました。コミュニティは長い間ひとりの有名人に支えられ続けると、もはやその人自身がコンテキストになってしまい、本来の目的を失ってしまいかねないからです。

タイミングとして適切だったのかどうかはわかりませんが、少なくとも1年3ヶ月たった現在、Tech-onとTech-inが完全に自走していることを考えれば、移譲するタイミングやスピードはそれほど悪くなかったのではないのかな?と思っています。

次回、最終回のVol.3では、1年間の成長と成果を数字で振り返ってみるとともに、これからのTech-on/Tech-inについて考えてみたいと思います。

vol.3:成果&まとめ編はコチラ!

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