vol.1からの続きです。
初体験の5日間連続フルリモートワークでメリットとデメリットの両方が見えてきました。 それぞれをピックアップしてみます。
メリット
◎出勤のために必要な時間が完全にゼロになる
勤務地へ通うために必要となる時間として、よく「通勤時間」が目安として使われますが、通勤に必要な時間的コストはこれだけではないってことをあらためて思い知らされました。
よく考えると、出勤前には必ず
- 無意味な服装規定に縛られた決して身軽ではない服に着替える
- それに見合った髪型をしたり髭を剃るなど身だしなみを整える
- 出勤中に必要になるモノを全部カバンに詰め込む
- 快適な電車、空いている電車などに合わせて時間を調整する
といったことを、毎日毎日行っています。
ここにさらに通勤時間が加わるのですから、ただ【作業をはじめるため】に必要となる時間があまりに膨大であることがわかります。通勤は無駄以外のなにものでもありません。 服装規定が外れ、出勤時刻が自由になり、勤務地にあらゆるファシリテーションが揃っていれば通勤時間だけ気にすれば良くなるんでしょうけれど、労働集約型でコストダウンのことばかり考え、業務成果ではなく株主の顔色しか見ていないほとんどの大企業では、これらはまず実現不可能といっていいでしょう。
逆にリモートワークはBYODさえ許可できればかかるコストはリモートデスクトップ環境、それもホスト側の準備だけで、思ったほどコストはかかりません。大企業でもフルリモートワークを実現できれば、こういった「出勤のために必要となるムダ」と「社員に払う通勤交通費」が省かれるので、働き方改革の一つの手段としてはかなり有効的であると私は考えます。
◎割り込みが入らず業務に集中できる
割り込みが嫌なら出勤してからビル内の別の場所に行けばいいという考えもありますが、実はそれでも知ってる社員に合ってしまうことがあるし、近場に居るといつ呼び出されるかも分かりません。
リモートワークであれば自宅近傍で作業するため知り合いはほぼおらず、作業中に鉢合わせるということはまずありません。またリモートワークという一線を引くことで、不必要に連絡を受けることも、呼び出されて打合せに参加されられるようなこともまずありません。少しだけ連絡が取りにくい環境にいることから、割り込みがブロックされ、パッシブではなくアクティブに時間をコントロールしているような感覚になります。
例えていうと、日本の企業では難しい「パーソナルスペースの確保」を、リモートワークで代替できるイメージです。
↓こういうのを社員全員の机に設置してくれている日本の大企業を私は見たことがない
参照元:https://www.zamroo.com/thousand-light-individual-office-space-corporate-office-setup/z-310595
◎家族との時間が激的に増える
出勤のためのムダな時間がなくなる事による副次的な効果として、家族との時間が激的に増えました。
単純に時間が増えただけでなく、1日目は家族と外でランチしたり、家で作業している時も妻と昼食を共にしたり、なんなら私が昼食を作ったりと、普段では絶対にできないようなことが経験できました。
また普段私は子供たちが学校に行く前に家を出ているのですが、彼らをきちんと見送ってもまだ通常の業務開始時間前であり、心の余裕や豊かな生活ができる、という意味でも相当にプラスです。
そして普段の生活ではたとえ平日に定時で帰ったとしても自宅到着は20時近くになってしまうため、自宅で家族と一緒に夕食をとることなどほぼ100%ありませんが、テレワークであればそれも可能になります。今回は夜に都内に出ていく必要があるイベントが5日中3日もありましたが、残り2日は家族と夕食をとれました。
家族との時間を持てる機会が増えるというのは、何にも代えがたいメリットだと思います。
デメリット
× 会社の様子が分からない
この5日間を通してフルリモートワークしていたのは所属部署では私だけでした。特殊な存在であるゆえに、自社内で起こっていることをSyncされることはなく、現場の様子や雰囲気が一切伝わってきません。暗黙の間に(正確には現地でいろいろ起こっているのですが)いろんなことが決まり先に進んでいたり、連絡が取れない状況が続いたりと、不安を抱えたまま業務を進めていることがたまにありました。
× 相手の表情が分からない
テレカンでカメラをOnにしていても、メインは画面共有で資料を見ながら進めたりといったことが多く、1on1の打合せでも相手の表情やニュアンス、空気みたいなものがつかみにくいというのがあります。
またたとえば通常の打ち合わせではできるような、「参加者全員の雰囲気を確認しながら進行する」ことはちょっとむずかしいと思いました。特に勝手知ったる仲であればまったく問題ないとは思いますが、ほとんど会ったことがないとか面識がない人との打合せをテレカンでやるのはかなり骨が折れます。
ここはテレカンツールの選び方や使い方などを工夫したりといった、何らかの対策やルールをとる必要がありそうです。
× サボってしまう可能性は捨てきれない
私にとっては最適な作業環境に感じたリモートワークも、人によっては【サボりの温床】になる可能性は捨てきれないかもしれません。
通常、打合せは週例と臨時合わせても週2、3時間程度であり、それ以外はすべて自分の時間として自己責任で使えるとなったとき、人によっては「誰も見ていないからサボってしまえ」という思考に陥る可能性は非常に高い。労働集約型で仕事をしている人は基本的に「作業をしていた時間」をベースに評価が決まるので、リモートワークならその作業時間を報告すればいいからです。
上司にあたる人が自分の作業の様子をうかがっているという「ゆるい監視」が利かないリモートワークでは、自己管理をどうやらせるのかがキーポイントになりそうです。
問題点と改善提案
上のデメリットに加え、5日間のフルリモートワークで見えてきたいくつかの問題点もあります。それぞれを上げて、解決案を考えてみました。
問題点①:テレカンで音声がまともに聞こえない
解決案①:テレカン専用マイクスピーカーと電話回線で解決!
この問題の原因はほとんどがマイク・スピーカーの問題。スマホのスピーカーでできないことはないけど、音声環境としては本当に最悪です。
許されるなら参加者全員がリモートで入り、マイク付きヘッドホンでテレカンするのが最も音声がクリアになりますが、いろんな理由でそれが実現できない場合は、JabraやYAMAHAなどのテレカン用マイク・スピーカーを購入して、会社側の各所に配置するかあるいはいつでも持ち出せるようにしておき、スマホやPCからBluetoothでテレカンスピーカーに繋ぐようにすると良いです。これらのスピーカーの効果は【圧倒的】であり、ストレスフリーでテレカンを進めたいなら必須とも言えるデバイスです。
今やこれらのスピーカーはそれほど高い値段でなくても手に入ります。(YAMAHAは高いですが)
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また1対1のテレカンであれば音声は通信キャリアの電話回線がおすすめです。不安定なWeb会議ツールと違い電話回線はよほどのことが無い限り切れないので、仮にWeb会議ツールが不安定で資料が見えなくなったりしたときも、すぐに音声でそれを知らせることができます。音声と画面は別のツールを使うのが安定的なテレカンを行うためのコツです。
また多人数が参加するテレカンではZoomが音声が最もクリアです。ただし3人以上だと無料枠は40分しか使えないので注意。もし多人数が入れる電話会議システムが利用できるのであれば、そちらを積極的に利用したいところです。
問題点②:ホワイトボードがないから意識合わせが難しい
解決案②:オンライン前提の会議ファシリテーションに変更
これまでのオフラインを主体とした会議ファシリテーションのままでは、テレカンがうまく機能しなくて当然です。1人でもテレカンで入ってくるなら、オンラインを主体としたファシリテーションは必須となります。
たとえば一般的な打合せでは、ファシリテーターが先にアジェンダとゴールを決めてテキストに起こしておき、このテキストをリモート参加者にも画面共有しつつ、議事メモをこのテキストに直接記入しながら会議を進行します。こうすれば場所がどこだろうが参加者の認識齟齬はまず起こりません。
またブレストなど議論が必要となる会議ではよくホワイトボードを使ったりしますが、それらはEXCELかGoogle SpreadSheetを方眼紙にして使えばほぼ同等の環境をオンラインに用意できます。今のオフィスツールはたいてい共同編集が可能なので、誰かが書いている横で別の場所に記入するなど、むしろホワイトボードでは難しかったことも可能になります。それでも手書きが必要なら、手で書いたものをスマホで撮ってEXCELに貼ればいい。画像オブジェクトとして拡大縮小、移動させたりもできるから、線でつないだり位置で関係を表現したりも可能です。
実際何度もこの方法ででブレスト会議をリモートでやっていますが、なにか不都合があったことは一度もありません。むしろこの方法のほうが直接ブレスト内容がファイルになるため、ホワイトボードより管理が楽かもしれません。
問題点③:自己管理できない人はサボってしまうかもしれない
解決案③:通常勤務時にある「ゆるい監視」を別の方法で実現
本来なら本人の業務評価の仕方を変えるべきなのですが、それはなかなか難しいし時間のかかる問題だと思います。
なので、ここでは「なぜリモートワークではついサボってしまうのか」という点に注目して対策を考えます。
リモートワークでは、作業の進捗がすべて自己責任・自己管理になります。心が強い人、あるいは評価をアウトプットの質で計られている人にとってはこれほど有意義な環境はありませんが、そうでない人にとっては管理・監視されなくなったのと同じことで、ついつい気が緩んでサボりに走ってしまうものと思われます。
でれば、先にも書いた「上司からのゆるい監視」を、物理的なものとは別の方法で代替できればそれなりに効果はあるはずです。
私の所属部門ではテレワークデイズ以前から、リモート作業する際の作業報告用のチャネルがMS Teams上に立っています。そこには、作業開始時に「今日やる予定の作業」を書いて作業開始宣言し、必要に応じて途中経過をアップデートしつつ、作業終了時には「今日やった作業」を書いて作業終了宣言を行うというルールがあります。
個人的には必要ないなと感じていたのですが、もしかするとサボりぐせのある人にとってはこの環境が「ゆるい監視効果」となって、本人のサボりを防いでくれる効果がありそうです。書いたからにはやらなければならないし、作業予定を出して完了未済報告をするということは、見積もりと評価のフィードバックを短期間で回すことにもなるので、上司にとっても本人にとっても気づきが多い業務管理になるはずです。
ただし自己管理できる人にとってはこの作業自体が煩わしいことこの上ないので、定型化したりツール化するなどして投稿にかかるコストは最小化したいところです。
まとめ
実際に1週間のフルリモートワークを経験してみて感じたことは、
「私の携わっている仕事ならフルリモートワークでも完璧に業務が成立する」
ということでした。
参加している人間が慣れていないこともあったり、多少の環境不備などもありますが、それらはすぐに解消できるものばかりで、リモートワークをすることによって得られるメリットのほうが他のデメリットよりも遥かに大きかったです。はっきり行って「なんで出勤してんの?」って言いたくなるレベルです。
もちろんオフラインで会い、顔を合わせて話をする事はとても重要だと思いますし、私も大好きです。しかしそれは相手の表情や言動の機微を感じ取らなければならないようなセンシティブな話題を扱うときや、初めてのお客様との面会など相手に失礼に当たらないようにすべき時など、機会が非常に限定されるはずです。また飲み会や食事会など、リラックスした空間で膝を突き合わせてジックリと話し込みたいときなどはオフラインでなければならないでしょう。
でも、少なくとも社内、あるいはパートナー関係にある企業との共同作業であれば、フルリモートワークでもまったく問題なく進めれることを今回のテレワークでは実証できました。テレワークに関するあらゆるツールが揃っているいまの時代、環境とルールだけきちんと揃えておけば、殆どの企業で今すぐに導入できるはずです。
弊社も環境面や文化面がまだまだフルリモートワークを受け入れるには程遠いところがありますが、ぜひ日本中にこの文化が広がってほしいと強く感じます。