世間がテレワークテレワークと騒ぎ出す少し前。
2020年2月25日から、私は「勝手フルテレワーク」にシフトしました。
年のいった家族と同居している私は、感染状況の悪化に伴い自社のテレワーク制度を存分に活用して自主的に自粛モードに入りました。 自社からフルテレワーク命令が出たのはそれから程なくしてでしたが、この日から1度だけクルマでPCとモニターを取りに行った以外は、これまで1度も通勤をしてきませんでした。
実に、5ヶ月ぶりの出勤です。
フルテレワークを始めた当初から5ヶ月の間に起きた環境面と心理面の変化はまた別の記事に書いてみたいと思いますが、ひとまず通勤してみての印象をつらつら書いてみることにします。
最初はドキドキ
この5ヶ月間、親戚の近辺や近場に旅行に行くことはあってもその移動手段はすべて「自家用車」であり、拠点間の移動は「身内だけしか居ない空間」での移動でした。
それが、ついに三島の街を電車で離れるわけです。それも目的地は新型コロナ感染者が爆増している東京。怖くないわけがありません。
実に5ヶ月ぶりの出所、、じゃなかった出勤。シャバの空気はうまいが、不安のほうが先に立つ。
— mamohacy (@mamohacy) 2020年7月26日
オフピークさせてるとはいえ流石に新幹線はガラガラ。定石に従って一番後ろの席をゲット。#新幹線通勤 #三島駅 #オフピーク pic.twitter.com/002iOllY35
通常の通勤時間から約1時間ほどシフトさせて、9時ちょっと前の三島発の新幹線に乗り込む。ピークはずれているとはいえ、驚きの空きっぷり。1車両に7人くらいしか乗ってない。
ウイルス感染対策の定石に従って、一番後ろの席をゲットするも、前の方で激しくくしゃみをするオッサンが。。。
新幹線の中で、超大声でくしゃみしてる人いる。。。。普段でも気にするのにこのタイミングでこれは怖い。 #新幹線通勤
— mamohacy (@mamohacy) 2020年7月27日
周囲にいた人が凄い顔でオッサンを睨んだあと、早足で車両を変更していました。。。わかるよその気持ち。。
東京駅からも自転車で
東京駅についてからも一発目からいきなり在来線に乗る勇気がどうしても出ず、いつもお世話になっているドコモのレンタルバイクで虎ノ門にGo。
いつもお世話になっております。
— mamohacy (@mamohacy) 2020年7月27日
これで密を回避できます。#docomoバイクシェア #レンタサイクル pic.twitter.com/KU2k8PfBvZ
ドコモのレンタルバイクには乗り慣れているとはいえ、感染源に触れる可能性を極限まで減らせるという手段の一つとしては、コスト面を考えても本当に最高の乗り物だなと思いました。
いざ職場へ!
まずいきなり出勤するフロアを間違える(笑)5ヶ月も経つと、いろんなことを忘れている。勝手がわからず右往左往。
上司にもリアルでは5ヶ月ぶりに会ったのでなんかすごく変な気分。オンラインでは毎日会っているのに、リアルで会うのとビデオ越しに合うのではこうも違うんだなーと痛感。
今日はそれほど業務が忙しくなく、打ち合わせは3本でうち1本のみがショートのテレカン。「対面でやるべき」という打ち合わせのためにある意味リスクを犯して出勤したのだけれど、その価値は十分すぎるほど。今日の2つの「対面打ち合わせ」では、ここ5ヶ月間やり続けてきたテレカンでは得られなかった強烈な達成感を得ることができました。
1つは微妙な関係性を持つ部署間との難しい合意取得、もう1つは私の頭の中の悩み事をホワイトボードで書き連ねて上司2人との認識合わせを行う会議。いくらテレカンのツールが高度になったとしても、「空気感を共有すること」は絶対にできないし、その場の空気によって生み出される会話もある、ということを再認識。ノンバーバルコミュニケーションによって心理的障壁が下がるのは間違いなく、だからこそ人は会って話をしたいんだな、、、、と思いました。
タイミングが合わずそのままTech-on参加
この日は、自分が運営スタッフでもあるTech-on MeetUpのオンライン開催の日でした。
運営に関わっていることもあったのと、混雑時間帯の帰宅を避けたかったこともあり、結局ラストまで参加し終電に向けてダッシュ。
外に出ると生憎の雨・・・・で、否応なく銀座線と山手線に乗ることに。とはいえ、やはり時間帯が時間帯だけにガラガラで、うまいこと密を避けて帰れたようです。
5ヶ月ぶりの出勤なのに終電帰りとはね。。。でもま、帰りも空いてたからいいか #新幹線通勤 pic.twitter.com/csaYSgDlLH
— mamohacy (@mamohacy) 2020年7月27日
5ヶ月ぶりの出勤で感じたこと
異常なほどに空いている新幹線
おそらく遠方から出勤している人ほどテレワーク率が高いのではないかと予想されますが、それでも新幹線の乗車率は驚異的なレベルで低かったです。
いくら気圧制御のための強制換気がされているとはいえ、やっぱり超長時間ドアも開かない車両に閉じ込められるのは気分的に嫌ですし、出張の数も相当減っているでしょうから仕方ないことなのかもしれませんが、JRにとってドル箱であろう新幹線がこれでは、彼らの経営へのダメージは相当なものだろうなと心配になってしまいました。
人と触れあうことへの「ストレス」
近場以外、殆ど外に出てないこともあり、まったく知らない他人がたくさんいる状況が相当に精神的なストレス(感染への恐怖、といったほうが正しい)になっているようで、帰りにはヘトヘトになっていました。
また「対面で他人と話す」こと自体が久しぶりすぎて、会話の仕方?が若干わからなくなっている自分に驚いていました。冗談で「出所」とか書きましたが、刑務所から出てきた人は最初、久しぶりに知らない人と話すときはきっとこういう気分なんだろうなと思いました。
人がいるところ、で活動し、他人と会話する、ことが、どれだけストレスフルでエネルギーを必要としていたのか、きっとテレワークに入らなければ理解できなかったことだと思います。
自粛でリスクは減り、恐怖感は増える
テレワークで自宅にこもっているとどんどん周りが見えなくなっていって、極端なハナシ自宅以外はすべて危険な空間だという認識が刷り込まれていきます。外に出て不特定多数の人と接触すること=感染するというふうに、意識が切り替えられていく感じです。私は仕事柄、たまたまSNSやWebを通じて"外界"のリアルな情報を取り入れることができていますが、その私ですらこの感じですから、自らが触れるメディアが新聞やTVに限られているような人は、刷り込み傾向がより顕著に表れることでしょう。
しかし、自社都合で強制的にテレワークに入ることの出来た(入らされた)人を除き、殆どの人がリスクを感じながらも元の生活をいままで通り続けざるを得なかったはずです。自粛していたことで感じられた恐怖感は、実際に街に出て行動してみることで減っていくのがわかりました。きっとこれを何日も繰り返せば、過剰とも言える恐怖感はなくなり、危機感も薄れていくはずす。だとすれば、この2者間における「新型コロナに対する危機意識の違い」は、相当に大きいと言わざる得ません。
明確に新型コロナ感染の第二波が認められた状況をうけて政府が「テレワーク7割」を要請していましたが、そうなればますますその差は開く一方でしょう。政府が今回の渦中にあって、この2極化する人々を納得させる「うまい折衷案」を出すのは、本当に難しいと思います。
どうやって経済活動を回していくべきか?
おそらく今後は我々の意思に関係なく、世の中のあらゆるシステムのオンライン化が強制的に進んでいくことになると思われます。こうなるとますます人々の意見は「自粛側」に傾いていき、経済を回す活動に舵が切りにくくなると思います。なぜなら、これまでの経済活動は基本的に人と人とがリアルで触れ合うことを前提に組み立てられているからです。現在の市場システムがそうなっているのですから、当然政府から出る施策も現行市場を「復旧」させることを前提としたものになるでしょうけれど、人々がどんどん外に出なくなることが増え、それが当たり前の世界になるのだとしたら、「過去に回帰することへの投資」は、もしかしたら無駄になってしまうのかもしれません。
しかし、それで飯を食っている人が大勢いる以上、たとえ付け焼き刃だとしても現行市場への補助という政策は打たざるを得ないと思います。一気に市場の転換なんてできませんし、それで明日を生きられない人たちが大量発生すれば市場の崩壊だけでは済まず、国のクラッシュですら起きかねないからです。
私は、この状況下にあって唯一影響を受けなかったであろうIT業界に「たまたま」居ることが出来ました。こんなのは単に運が良かっただけだと言わざるを得ません。それこそ「生かされた」んだと思います。であるならせめて、その運を日本に還元することができないか?言い換えると、日本の経済活動への貢献を、政府からの援助などなしで実現する方法はないのか?と近頃ずっと考えています。それにはきっと、オンラインを前提とした「これまでにない市場の開拓」と、その市場への「人材リソースの異動容易性の確保」がキーになると思いますが、残念ながらまだ具体的な施策は見つけられていません。
「オンラインを前提とした経済を作ること」という、一見突拍子もない意見は、すでにコロナ渦以前から他国では実現されはじめていて、これから日本でも起こりうることとして「アフターデジタル」の世界で描かれていましたが、まさか新型コロナでそれが強制的に進められることになるとは思っても見ませんでした。早く元の世界に戻って欲しいと切に願いつつも、一方でもう元には戻ることはできないのかもしれない。アフターコロナの時代とはそういうものなのかもしれません。
明日もまたOMO(Online Merges with Offline)の世界を妄想しつつ、もういちどアフターデジタルを読み返してみたいと思います。
追伸:「アフターデジタル2」が出てることを今日知りました!ソッコーでポチりました。楽しみ。
- 作者:藤井 保文
- 発売日: 2020/07/23
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