「それでは、はじめますね」
「よろしく、、、、お願いします。」
手術のスタート時点は、かなり意識がはっきりしていた。
自分の鼓動の音がはっきり聞こえる。緊張は最高潮を迎えていた。
「いまから麻酔を打ちます。頑張ってください」
予告通り、目頭から麻酔注射が打ち込まれた。
実際、痛さはどのくらいだったのか?
筆舌に尽くしがたいが、本当に、マジで、冗談じゃないくらい、痛かった。
私が過去に受けた、筋肉注射も、脊髄注射も、足の親指の爪の根元への注射も、その全てが子どもの遊びに思えるのレベル。そして痛さの強さ、もそうだが、痛い時間の長さ、にも驚いた。針が入り、麻酔薬が注入され、眼底にそれが入り込み、針が抜かれる。すべてがはっきりと把握できる、永遠とも思えるほどの時間だった。
「よく頑張りましたね。一番痛いのはこれで終わりです。あとは任せてください」
そのドクターの優しいひとことに安心したのか、それとも安静剤が効いたのか、ここから先の記憶は途切れ途切れだ。
時折、激しい痛みを感じて唸り声を上げていたのは覚えている。おそらく、眼球を糸で動かされていたのだろう。
術中は、機械や道具の音もそうだし、ドクターたちの会話の内容もはっきりと聞こえた。手術室には音楽が流れていて、先生たちが誰かの結婚式に出席するだとかしないだとか言う話題を話されていた。幸いだったのは、想像より手術室が暗かったことで、視力の悪さも相まって、手術の動作はほとんど何も見えなかったことだ。
手術は計画に従って淡々と進められていった。
(続く)