先日、クラスメソッドさんの広報をしている、たいがーことKana Kitagawa(https://twitter.com/knuna_t) のYouTube番組「たいがーのトガった人に聞いてみた」というYouTubeの番組に出演させていただきました。
この中で、タイトルにもあるようになぜ大企業でCCoEをしていた私が三島を中心とした地域共創に向かったのか?というお話に触れているので、ぜひ詳細はこの番組を見ていただたきたいのですが、せっかくですのでこの番組の中でも触れているいくつかの内容について少し深掘りしてみたいと思います。
「エンジニアで世界を変える」という信条について
私がことあるごとに口にするこのキーワードは、まさにライフワークとも呼べるもので、過去の登壇や記事なんかでもたびたび言及してきました。公式非公式含めて、明確に口にしているものは以下のようなものがあります。
自分はそういうのがやりたかったんだっけ? 会社を変え、文化を変え、日本を変える、そのために技術を磨いてきたのではなかったか、と
私はこうした現状を変えて、エンジニアが正当に評価される社会を作りたいという思いを抱き続けていました。
大橋には、大きな目標があります。それは、「日本のエンジニアの価値を高めたい」ということです。
私が大学を出てITエンジニア人生を歩み始めた頃、IT業界はまさに「ブラック企業」と呼ばれる働き方が当たり前の時代でした。
2徹3徹はあたりまえ、当然のことのように休日出勤し、自宅はシャワーを浴びて服を取りに行く場所であり、月に休めるのは1〜2日。残業代のほうが基本給を遥かに超えるなんてザラ。まわりも誰もそれをおかしいと思わないというある意味「狂った世界」でした。
これにより体調を崩したり精神を病んだりする人が続出。2ちゃんねるで話題となり映画にもなった「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」の世界がむしろホワイト企業にすら見えるのが”IT企業のリアル”でした。
それでいてIT業界には今もはびこる「多重請負構造」という悪しき習慣があります。この悪魔のツリー構造の中間から末端にいるITエンジニアの給与や就業環境は、いまでは到底考えられないほど劣悪でした。ここにはとても書けないような関係者の酷い発言や、同僚を巻き込んだ事故が何事もなかったかのように処理されていくさまなど、もう一生忘れることができないであろう酷い経験をたくさんしました。
「ITエンジニアは使い捨ての駒」
こんな言葉が似合う非人道的な扱われ方をした私は、ひどく自尊心を傷つけられました。
”私達はこんなことをするために情報工学、ITエンジニアリングを学んできたわけではない。”
私のライフワークは、いま思えば、誰かによって創られてしまったこの狂った世界を破壊(ディスラプト)したい、という強い想いから生まれた必然だったのかもしれません。
ITエンジニアの地位向上が叶った現代、ライフワークは完遂したのか?
しかし、いまは全く時代が変わりました。社会的ルールが整備され、すこしずつですが多重請負構造が壊れつつあります。事業会社が丸投げ体質をやめ、どんどん内製化に向かっているのもとても良い兆候だと思います。
給与面に関しても、日本にも優秀なITエンジニアがたくさんいることが分かった外資が人材市場に入り込んできたことで局面は一変しました。いまはデキるITエンジニアには年収1千万円以上のプライスタグがつくのは当たり前といった時代になりました。いまではそれでもITエンジニアを獲得できないほど、人材市場は完全に「売り手市場」になってしまっています。
高校生が選ぶなりたい職業の上位に、常にITエンジニアがいる時代。本当に素晴らしいことだと思います。
その結果、私のライフワークは完遂できたのでしょうか?
表現が正しいかどうかはわかりませんが、いまのITエンジニアの売り手市場は、お金を持っている大企業同士が札束でITエンジニアを買い、技術力で殴り合ってるような状態といえます。持てるものが手にできるモノ=ITエンジニアを使い、それによって生み出されたものを、また手にできる企業が買う。まるで、一般人には到底手の届かない遥か彼方の上空で戦っている姿を見ているかのようです。
確かにITエンジニアの自尊心は保たれるかもしれない。
でも、それで本当にITエンジニアの幸福度は高まるのでしょうか?
自己実現欲求は満たされるのでしょうか?
その中で偶発的に、そして導かれるように出会ったのが、地域共創への道でした。
大企業のカルチャー変革から地域共創へ
話をすこし昔に戻します。
私がKDDIという大企業に入り、社内のパブリッククラウドの利用推進を行ったことも、ライフワークである「ITエンジニアの地位向上」のためにやったことです。パブリッククラウドはセルフサービスが基本なので、活用にあっては社内のエンジニアリング力を上げざるを得ず、また同様にこれまでアプリ領域を担当していたITエンジニアが必然的にインフラ領域まで守備範囲を広げられるようになります。KDDIたる企業がパブリッククラウドの利用を進めるられるようなカルチャーを持つことができれば、これに追随する企業が必ず出てくれるはず。そう思って、KDDIでパブリッククラウドの利用をすすめ、外部に情報発信を続けてきました。確かにKDDIで行ってきたことで、日本国内のITエンジニア地位向上にわずかながらも尽力できたかもしれません。
AWS採用を前提に整備、シャドーITから始まったKDDIのクラウド統制 | 日経クロステック(xTECH)
ですが、先に書いた通り私から見える世界では、日本でITエンジニアが必要とされている領域はとても広いにも関わらず、実際に活躍できる場所がとても限られているように見えました。なんとも言えないジレンマのようなものを感じていた頃、あのコロナ禍が訪れます。
奇しくも東京に出社できなくなったことからはじめた地元三島でのコミュニティ活動をきっかけに地元愛に目覚め、この地域になんからの形で貢献できないか?と考えだしたことから少しずつ地域貢献に目を向けるようになります。
↓最初のきっかけとなった、みしま未来研究所のコワーキングスペース契約
テレワークが進み今後も当分戻らないと踏んだ事もあり地元ともっと繋がりたいと感じて「みしま未来研究所」という施設にあるコワーキングスペースを個人で契約しました。
— まもはしぃ(Mamoru Ohashi)@三島市移住アンバサダー🗻 (@mamohacy) 2020年11月19日
元幼稚園をリノベして作ったオープンスペースで、めちゃくちゃオシャレで静か。ここで勉強会も開くぞ!#みしま未来研究所 pic.twitter.com/gJqhcvo9XN
↓みしまでの最初のコミュニティ活動参加となった「みしまデジタル人材交流会」
オフの参加数はそもそも10人未満(想定通り)
— まもはしぃ(Mamoru Ohashi)@三島市移住アンバサダー🗻 (@mamohacy) 2020年12月3日
イベントには十分のスペース。
配信元として使うのもよいですね。 pic.twitter.com/5ojBvTtqMG
↓三島市移住アンバサダーや自社の三島オフィスを作るきっかけにもなった「みしま日帰りワーケーション体験ツアー」
ワーケーションイベントを企画して地域の受け入れ側としての経験を得ながらも、自らもワーケーションとしていくつもの地域に飛び、そのたびに現地の方々とお話するなかで、自分の中に芽生えたある想いが、すこしずつ確信めいたものに変わるようになってきました。
「ITエンジニアのチカラを地域に直接還元できれば、
日本のDXを支える原動力になれるんじゃないか?」
これが、わたしがライフワークとして取り組む新たなミッションとして「地域共創」が加わることになった本当の理由です。
地域共創でめざす「ITエンジニアの未来」
いまのわたしは、ITエンジニアの目を首都圏から日本の地方に向け、現地に向かわせる機会を増やし、本業とは違う形で地域に関わる方法を模索しています。フルテレワークを前提とした地方移住やUターン推進なんかもそうですが、首都圏に行かなければITエンジニアになれない、などという悲劇がおきないように、地方でITエンジニアを目指す若者がその地域に残ったままでITエンジニア街道を邁進できる環境をどう作れるか?の実現についても実際に動き出しています。
また既存のITエンジニアが最も親和性の高いワーケーションの推進も、地域との関わりを生み出す重要なファクターだと思っています。その想いで同僚といっしょに作ったサービスが、エンジニアによるエンジニアのためのワーケーション先検索サービス「タビトシゴト」です。
そして最も重要、かつまだ実現方法が見えてないものは、地域共創というアクテビティに今の所属企業を辞めずに関われることです。ひとことで言ってしまえば副業なんでしょうけれど、わたしはそんなに堅苦しいものでなくてもいいと思うんです。日雇いアルバイトや短期間かつショットでの業務担当、あるいはボランティアとアルバイトの中間のような、ITエンジニアの市場価値を壊すことなく、自らのスキルの一部を地域に還元する方法です。
自分自身も地方に飛んでみてわかったことは、いま日本の地域で必要としているIT技術は、わたしたちITエンジニアが扱うハイエンドなスキルではありません。それこそ数分から1,2時間もあればできあがってしまうような、わたしたちが日頃息をするように使っているベーシックな技術です。「こんなものでお金をもらうわけにはいかない」と私たちが思ってしまうことであっても、実際に彼らから聞いた言葉を借りれば、「まるで魔法みたい」に見えるのだそうです。
これを「ITエンジニア版ふるさと納税」のようなかたちで、対価としてお金以外のもので受け取ることができないのか。
モノであっても、体験であっても、肩書であっても、なんでもいいと思うんです。
ここが実現できれば、私の夢にまた1歩近づくことができると思います。
↓企業版ふるさと納税。企業という形ではなくITエンジニア個人が技術力を地域に還元して返礼品を得る方式がほしい
さいごに
動画は、三島にあるゲストハウスGiwaの1F、GiwaBarで撮影しています。 寿司屋に見えますが寿司は売っておらず、1時間限定で開かれるバーです。 普通に行ける場所ですし、三島に来られた際はご案内できますよ。
ぜひ動画も見ていただき、「聖地巡礼」しに来ててくださいねー!